このページは University of Cambridge の
Structural Medicine Protein Crystallography Courese の一部の和訳です.現時点では和訳公開の許可を得ていないものですが,結晶観察の説明のために掲載しています(ただし,ドロップの例の写真は許可を得て借りています).
結晶化ドロップを顕微鏡の最大倍率で偏光子を使って観察する.
結晶であれば”きらめいて”いるだろうし,複屈折を持っていて,偏向子を回転すれば色が変わる.
Java applet を使った複屈折の優れた説明はMolecular
Expressionsによる複屈折のサイトを見ると良い.
顕微鏡観察の結果は9つまたはそれらの組み合わせである可能性がある(ここの写真は許可を得て借りています).
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透明なドロップ
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タンパク質が飽和状態に達していないため,格形成が起こっていない
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物質
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糸,ほこり,ガラス等々
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これらはセットアップ直後の観察で見られるはず
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沈殿
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沈殿が茶色でタンパク質が変性している場合,結晶は得られない.
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沈殿が白くアモルファスでタンパク質がフォールディングしている場合,結晶化の可能性あり
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ゲル
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膜
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形成されるプロセスは良く分かっていない
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膜が形成される前に結晶が成長することはあるが膜形成の後では何も起こらない
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相分離
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無数の小さい丸いツブツブ
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相分離した中から結晶が成長することもある
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ひとつの沈殿剤が他の沈殿剤と混合出来なくなり相分離相分離している
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オイルの可能性もある
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オイル
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相分離の時と比べて通常ツブツブ少なくて丸くない
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タンパク質が水相から分離してしまっている
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Spherulites丸いもの
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透明で複屈折を持つクラスター
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オイルとの区別は難しい
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結晶
もし結晶をみつけたら...
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試料タンパク質が劣化する前に,直ちにその結晶化条件周辺を検索する
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再現性があればドロップをつぶして結晶が塩かタンパク質かを調べる
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再現性が無いならば,その結晶をシーディングに使う
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X線写真を撮る
塩かタンパク質か?
振動写真を撮影してみる以外に,結晶が塩かタンパク質かを判断するあまり良い方法は無い(撮影の節を参照).
ただし,以下の方法を試してみることは出来る:
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非常に細いガラス棒やガラスピペット(ブンゼンバーナーで引き伸ばして作る)で結晶をつついてみる.これは最も単純で恐らく最良のテスト方法.タンパク質結晶であればとても容易に壊れる.
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沈殿剤の中に結晶が見られないか,ウェルをチェックする.
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タンパク質を含まない同じバッファーで結晶化してみて,結晶が成長するかどうかを見る.
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抗体を持っているなら,結晶をゲルの上で転がし銀染色かウエスタンをやってみる.0.3
x 0.3 x 0.3ミリの結晶は約 15マイクログラムのタンパク質を含む.
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染料を使う. Hamptonの IZIT
やr methylene
green はタンパク質を染色するが塩は染めない.
一年後やさらに後で結晶を見つけたら...
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それはたぶん塩.塩かタンパク質かガラスファイバーでつついて調べてみる.
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もしそれがタンパク質だったら,劣化したタンパク質かも知れない.電気泳動や質量分析をやったりN末配列分析をやってみる
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結晶化に用いたもともとの試料が残っていないか探す
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結晶のあるドロップの周辺から少しドロップを取って使う
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タンパク質加水分解的に劣化を再現してみる
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その生成物を劣化した物と対比させてみる
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その生成物を使って,その条件の周辺で結晶化してみてどうなるか見る
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何も得られない場合,シーディングしてみる