X線の生体に与える影響
1.エックス線が生体の細胞に与える影響
○ ベルゴニ・トリボンドの法則
・哺乳動物の「細胞」の放射線の感受性高いものは
(1)細胞分裂頻度の高いもの
(2)将来の分裂回数の多いもの
(3)未分化のもの
○ 放射線の生物学的作用
・直接作用 分子が直接電離し障害を起こす
・間接作用 生成したラジカルやイオンが反応して障害を起こす
Ø 希釈効果 希釈試料ほど高不活性化「率」:間接作用の証拠
Ø その他 酸素効果,保護効果(ラジカルスカベンジャ),温度効果(凍結)
(システイン等の保護効果は,照射前に接種の必要あり)
○ 生物と放射線感受性
人間:数Sv,昆虫:数十Sv,下等細胞:数百Sv で死亡する
2.エックス線の組織・器官に与える影響
○ 組織・器官の感受性
再生系組織(細胞分裂多):感受性高い[リンパ組織,骨髄(造血器官),生殖]
(造血器官:骨髄,リンパ節,脾臓,胸腺;一番早く変化するのは白血球数)
正常値:白血球 7000,赤血球 450万,血小板 20万/mm3
非再生系組織 :感受性低い[骨,神経]
(胎児,特に脳は敏感)
造血>生殖>粘膜>皮膚>臓器>甲状腺>筋肉>結合組織>骨>神経
○ 皮膚障害
1度(脱毛) 1〜3 Sv (永久脱毛:6Sv以上)
2度(紅斑) 5〜6 Sv
3度(水泡) 8 Sv
4度(潰瘍) 10 Sv 以上
○ 生殖腺の影響
睾丸: 2.5Sv 一時無精子症,5〜6Sv 永久不妊
精原細胞 -> 精母細胞 -> 精子細胞 -> 精子
卵巣: 2Sv 一時不妊,4〜6Sv 永久不妊 (一回照射)
分割照射では総線量は大きくなる.
○ 潜伏期 (早期障害と晩発性障害)
悪性腫瘍 10年,白内障 1〜2年,不妊 3〜4週,皮膚 2〜3週
白血球(リンパ球)48時間,赤血球 15〜40日,血小板 2〜5週
*根幹細胞が成熟するまでの時間と細胞の寿命による(成熟細胞は影響少)
3.X線が全身に与える影響
○ 一回照射による被爆後の30日間の死亡率
Ø LD50(半数致死量) ,LD100(全数致死量)
○ 被爆線量と死亡原因
寿命が短縮: 2〜3Sv以下(一時衰弱し,回復する)
骨髄死: 3〜10Sv(LD50程度 人間のLD50 3〜5 Sv)
腸死: 10〜100Sv(別名3.5日死)
中枢神経死: 100Sv以上(数時間〜1日以内)
○ 人間の症状
0〜0.25Svでは自覚症状なし (0.25Svが血球検査で変化の現れる最小値)
宿酔 0.5Svくらいから(2,3日の潜伏期間あり.持続は2〜7日)
急性放射線症 1〜3Sv めまい,頭痛,食欲不振,嘔吐,下痢
0.5〜1Sv:一時的に白血球数減少,数日で身体機能完全回復
2Sv:50%に人が放射線症にかかる.数%死亡
3Sv:90%以上の人が放射線症にかかる.25%死亡
LD50 3〜5 Sv,LD100 6 Sv
○ 確定的影響と確率的影響
確定的影響:しきい値あり,S字状曲線
皮膚,血液,生殖腺,腸出血(急性効果);許容量あり
確率的影響:しきい値なし,直線状曲線
白血病,がん,遺伝的効果(晩発効果);許容量なし
4.実効線量と等価線量
○ 実効線量:(被爆した組織の線量当量 × リスク係数による荷重係数)の合計
確率的影響(遺伝,がん等)評価の指標
○ 等価線量:確定的影響(S字)を評価するため.特定の組織の受けた線量当量
Ø 1cm線量;全臓器の外部被爆
Ø 3mm線量;目の水晶体
Ø 70μm線量;皮膚
自然界からの被爆線量 年間 約1mSv