名古屋大学シンクロトロン光研究センター

Synchrotron radiation Research center, Nagoya University

概要

・微生物と相互作用する腐植物質とその類縁化合物の構造解明

 名古屋大学 未来材料システム研究所 システム創成部門
 片山 新太 教授
近年、微生物の電気化学的活性化や汚染物質の微生物分解による発電する技術を利用し、自立分散型の微生物浄化システムや、電気エネルギー回収システムの開発が期待されている。本研究グループは、その安定性から応用が期待される固体の細胞外電子伝達物質として、あらゆるpHで不溶の固体腐植物質ヒューミンを見いだした。現在、固体腐植ヒューミンの中の細胞外電子伝達機能に関与する化学構造を明らかにすることを目的として、シンクロトロン光を利用した解析を進めている。

・各種捕捉剤試料による気相水銀吸着とその化学形態分析へのXAFSの利用

 名古屋大学大学院 工学研究科 機械システム工学専攻
 義家 亮 准教授
石炭燃焼や各種廃棄物焼却の排ガスにおける水銀放出抑制のための水銀捕捉剤開発を目的として,塩素や硫黄を含有する複数の水銀捕捉剤試料について水銀吸着実験を行った.さらにその水銀吸着前後の試料に関して,硬X線XAFS(BL5S1)による水銀,および軟X線XAFS(BL6N1)による塩素と硫黄のXANESスペクトルを解析することで,水銀吸着に貢献する化合物種の探索,水銀吸着後の水銀化合物種の特定を試みた.

・AichiSRにおける放射光の産業利用

 科学技術交流財団 あいちシンクロトロン光センター ユーザー支援室
 砥綿 真一 コーディネータ
あいちシンクロトロン光センター(AichiSR)は、2013年3月に供用を開始した放射光施設である。産業利用を目的に設立され、7年が経過しようとしており、年々、利用者数は増加傾向である。ユーザーの産業分野は多岐にわたっており、植物から金属・無機素材、車両関係など様々である。AichiSRにおける利用状況と産業界の利用事例について述べる。

・単結晶構造解析ビームラインBL2S1の紹介

 名古屋大学 シンクロトロン光センター シンクロトロン光利用研究部門
 永江 峰幸 助教
BL2S1は,タンパク質や有機分子などの単結晶構造解析を主目的とするビームラインです. 波長0.75 Å,1.12 Å,1.80 Å用の3種類の分光結晶を所持しており,これらの波長を選択することが可能です.低温窒素ガス吹き付け型の冷却装置を使用することで,100 Kから298 Kの温度条件下の実験が可能です.試料ゴニオ周辺の環境を調整することで,ダイアモンドアンビルセル(DAC)を用いた高圧力条件下の実験が可能です.本セミナーでは,BL2S1を利用した実験例をいくつか紹介します.

・あいちSR BL8S2の紹介

 科学技術交流財団 あいちシンクロトロン光センター ビームライン課
 桜井 郁也 主任技術研究員
あいちシンクロトロン光センター BL8S2は、白色X線と2結晶分光器による単色X線(7-24 keV)を切り替えた運用が可能な汎用ビームラインであり、大きなビームサイズ(横40mm×縦12mm)を利用したイメージング測定やX線照射試験等の様々な実験に利用されている。本講演では、ビームラインBL8S2 の概要と現在利用されている様々な実験内容についての紹介を行うと共に、将来の拡張計画について話をしたい。

・AichiSR 硬X線XAFSビームライン BL5S1の紹介

 名古屋大学 シンクロトロン光センター シンクロトロン光利用研究部門
 髙濵 謙太朗 副技師
BL5S1は、X線吸収微細構造(XAFS: X-ray Absorption Fine Structure)測定によって試料中に含まれる元素の化学状態(酸化数・分子対称性等)や局所構造(原子間距離・配位数等)を解析することを目的としているビームラインです。K吸収端ではTiからMo、L吸収端ではCsからBiを測定対象としています。XAFSは、秩序だった構造を持たないアモルファス、薄膜、微粉末、ゲル、溶液、土壌、生物試料等の幅広い試料形態で測定可能であることから、材料科学や環境科学等の分野における非常に強力なツールとして活用されています。今回は、BL5S1で実施可能な測定手法や、実際の測定例について皆さんにご紹介します。

・AichiSRテンダーX線XAFS・光電子分光ビームラインBL6N1の紹介

 名古屋大学 シンクロトロン光センター シンクロトロン光利用研究部門
 陰地 宏 技師
 BL6N1では,1.75 keV~6 keVのいわゆるテンダー領域(軟X線と硬X線の中間)のX線を励起光とする,X線吸収分光(XAFS)と光電子分光が可能である。XAFSでは,K吸収端でSi~Cr,L3吸収端でRb~Csが分析対象とした測定が,超高真空下及びヘリウム雰囲気大気圧下で可能である。光電子分光については,通常のラボXPS(~1.5 keV)よりも高いエネルギーの励起光による分析が可能であるところに特徴がある。本講演では,BL6N1の概要と特徴及び測定事例について説明する。

・AichiSRの利用制度説明

 科学技術交流財団 あいちシンクロトロン光センター ユーザー支援室
 砥綿 真一 コーディネータ
あいちシンクロトロン光センターの利用について、利用相談から実際の利用に至るまでの手続き等を紹介する。また、有償利用、通常利用、測定代行、無償利用など、利用のカテゴリーについても述べる。