概要 1984 年に発見された準結晶では原子は周期的に並んでおらず、準周期性と呼ばれる特異な規則性にしたがって原子が配列します。この構造は高次元結晶学によりエレガントに記述されます。高次元結晶学では、3 次元空間で周期性をもたない原子の並びを、「補空間」と呼ばれる空間を加えた高次元空間を用いて記述します。いっぽう準結晶と共通の局所構造をもち3 次元空間の周期をもつ結晶である近似結晶は、準結晶と同じ高次元結晶から導かれます。このように補空間を含む高次元空間で統一的に記述される物質群は現在では「ハイパーマテリアル」と呼ばれ、近年構造だけでなく、物性においても強磁性や超伝導が発見され、新たな展開を示しています。また最新の計測技術を用いて、高次元結晶特有のフェィゾンやフォノンについても新たな知見が得られ、その特異な物性が明らかになりました。本シンポジウムではハイパーマテリアルの構造とその物性の最近の進展を専門外の方にも分かりやすく、興味を持っていただけるように紹介することを意図しました。